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Tutian日記

社員20名のベンチャーに新卒入社し、27歳で管理職になるも、29歳で創業130年老舗メーカーに一兵卒として転職してみて気づいたことを書きます。 ①人材業界②人事③就活④大企業vs中小企業といったネタで書こうと思います。ゆるいプライベートの話題も書きます。

雑誌に文章を寄稿してみた。

かなりご無沙汰してしまった。

先日、と言っても3月末だが、中国カラオケ大会が縁で知り合い、いまは語学に関する研究を行っている、西村英希さんから、協力してほしいという連絡があった。

なんでも、知人が雑誌を作っているとのこと。日本の生活や習慣などを中国に伝えるための雑誌だそうだ。プロの作家でない、素人が日本語で書いた文章を中国語に訳して雑誌に載せるらしい。

テーマは「生活と電車」。あとは何でもいいとのこと。

喜んでお引き受けしたところ「厳正な審査の結果、採録させていただくことに決まりました」とのこと。

実際に雑誌が発行されるのが今から楽しみだ。ちなみに、寄稿した文章を以下に載せておこう思う。

ちょっとデフォルメしているが、すべて実体験に基づいている話だ。

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「サラリーマンには、絶対なりたくない」

 

学生時代、電車に乗るたびに強く思ったものだ。

 

大学2年生のボクは、週に1回か2回、朝のラッシュ時間に多磨霊園から恵比寿まで電車に乗って、バイト先の翻訳会社に通っていた。身動きが取れなくなるほど混んだ電車に体をねじ込み、体重をかけてくる隣の人を必死で足を踏ん張って押し返し、肩と肘を張り自分のスペースを確保する。痴漢と疑われないため、右手はつり革、左手にはカバンを持っておくことも重要。新聞・雑誌なんてもちろん見られない。寿司詰めになりながら、押しくら饅頭を繰り返し、ただひたすら願うだけの時間だ。「早く目的地についてくれ」と。

恵比寿駅に着いても、終わりではない。そう、「降りるための闘い」が控えているのだ。見知らぬ人には誰も声をかけないここ東京でも、この瞬間ばかりは違う。「降ります」と、人をかき分け押しのけ、我先に道なき道を進まなければ、降りる前にドアが閉まってしまう。乗り過ごして遅刻するくらいなら…生き残るためには多少自己中心的にならないといけないのか。これが大人になると言うことなのか?

無事恵比寿駅で降車しホームにつくと、今度はホームが混んでいる。改札までは自分のペースで歩ければ2分もかからない道を、団子状態の集団の中で2、3倍以上時間をかけてのろのろ進む。周囲を見ると無表情か、辛そうに下を向く顔が多い。まるでゾンビの行進のようだ。

やっとこ改札を出ると、もうくたくたである。とてもじゃないが「これから仕事」という気分ではない。

この人たちは、何が楽しくて月曜から金曜までこれを繰り返すのだろう。これで、本当に充実した人生と言えるのだろうか?ボクはゾンビの一員なんかにはなりたくない。

 

夜。バイトを終えた後、友人と新宿の安い居酒屋での飲み会を終えたボクは、新宿から京王線で帰る。運よく始発の特快に座れた。深夜だからか、混み具合は朝ほどでもない。

 

「あいつ、本当に仕事できねえんだよな!」

「あんなヤツの下では、働けないっすよ!」

 

さえないサラリーマンが、酔った勢いでよく吠えている。大体、この手の話の内容は「職場の人間関係」「同僚・部下への不満」「経営者・上司への批判」だ。あんた、会社では大した立場じゃないんだろ?ていうか電車じゃなくて、会社で本人に直接言ってやれよ。何より、周りが迷惑なんだよ…

そもそも、そんなに嫌ならやめればいいじゃん。好きでもない仕事を毎日して、生産性のない愚痴を言う。この人は何のために働くのだろうか?そこまでして、人間は働かないといけないのだろうか…

「あと数年すれば、俺も卒業か。就職はせず、個人事業主にでもなろうかな…」憂鬱な気分で、調布駅にて各停に乗り換えると、今度は30前後の女性が大きな口を開け、いびきをかいている。体は斜めに傾き、2席にわたって占領している。あと一押しすると床に滑り落ちそうな勢いだ。

いい年してみっともないなあ。ていうか、会社勤めってそんなに疲れるのか…

 

あれから約10年。心の底からなりたくないと思っていたサラリーマンとして、ボクは毎日電車に乗る。確かに辛い時も、疲れる時もある。だが、学生時代のボクにはわからなかった楽しみもある。個人事業主と違い、会社のお金で思い切って仕事にチャレンジできる。個人では絶対会ってくれないような企業や省庁の方と会ってもらえる。一緒に喜びも悲しみもシェアできるメンバーがいる。仕事がきっかけではないと決して行かないような場所、触れられないような情報もある。

朝の満員電車は、住む場所や使う路線を工夫し、朝30分だけ早く出れば避けられることも分かった。たまに起きるのが遅くなるとゾンビの群れに遭遇するが、毎日ゾンビの一員になるかどうかは自分の意思次第なのだ。

夜、同年代の男性社員と電車で上司の批判で盛り上がる。もちろん、会社で本人に直接話すように努力はしている。しかし、極力建設的に話すには言葉を選ぶ必要もあるし、言いすぎると嫌われるからぐっとこらえることもある。押さえつけていた言葉が、電車の中で開放感とともに吐露されるのだ。周りには迷惑かもしれないが…

同僚の女性は疲れたのか、大きな口を開けて寝ている。ただ、彼女は無駄にだらだら仕事したくないから、会社ではいつもトップギアだ。限られた時間で生産性を上げるために、常に頭をフル回転させている彼女には、帰りの電車が、数少ないほっとできる時間なのだ。たまには寝てしまっても、いいじゃないか。周りには迷惑かもしれないが…

 

私に言う資格はないが、世の学生の皆さんには、電車の中で疲れたサラリーマンを見たら「この人は会社で頑張っている人だな」と思ってあげるようにしてほしい。「サラリーマンに憧れを持て」とは言わないから。