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Tutian日記

社員20名のベンチャーに新卒入社し、27歳で管理職になるも、29歳で創業130年老舗メーカーに一兵卒として転職してみて気づいたことを書きます。 ①人材業界②人事③就活④大企業vs中小企業といったネタで書こうと思います。ゆるいプライベートの話題も書きます。

震災時の新卒採用・就職活動<①企業対応篇> ~3.11の経験から~

熊本で地震が起きた翌日、私は採用活動の応援のため福岡出張の予定だったが、止むを得ず出張は中止となった。

 

出張を中止するか否か、社内の方々と夜から朝にかけて対応を協議していたときにふと思った。「東日本大震災当時、採用担当だった人で、今も同じ企業の採用担当として最前線にいる人はほとんどいないのでは」「災害時の採用活動を知っている・相談できる人は、どこの会社でも意外と身近にいないのではないか」と。

 

というわで、2011年当時(2012年卒新卒採用)の経験が少しでもヒントになればと思い、下記に当時の企業側の対応から言えることをまとめてみた。

<震災時の採用活動・企業対応のキモ>

①むやみに選考活動を延期・自粛しない(安全が確保できるなら、予定通り実施する)

被災地域の応募者には、個別の柔軟な配慮を

 

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①むやみに選考活動を延期・自粛しない(安全が確保できるなら、予定通り実施する)

2012卒採用は、ふたを開けてみると「可能な範囲で当初のスケジュール通り選考活動を継続した企業」が一人勝ちした結果となった。いかにブランドのある人気企業でも「選考活動を全面的に自粛・延期」した企業は、採用者の質・数確保に苦労した。中小・ベンチャー企業でもブランドネームのハンデをひっくり返して優秀な人材が採用しやすかった年であった。

 

余談だが、当時は「自粛しないと叩かれる」という恐怖感からか、卒業式も、お花見も、CMもなんでも自粛した時であった。空気を読んで自粛したせいで、却って当事者に弊害が出ると言うケースも少なくなかったが、この「選考の自粛」もその一つかもしれない。

 

特に、経団連加盟の大企業から「(当時は4月1日解禁だったのを)6月1日からの選考実施とする」表明が相次いだ。延期にした主な会社は大手通信、大手メーカーなどいわゆる「人気企業」であったと記憶している。

 

一方、準大手・冠(大手子会社)系・中小・ベンチャーの企業は、直接被災した地域以外においては、震災後数週間経ち余震の恐れ・交通機関のマヒもほぼなくなったタイミングで、当初の予定通り選考活動を実施した。

 

結果、学生にとっては、身動きが取りにくい状況になった。

 

6月まで、人気企業は選考をしない。6月まで待っても人気企業に受かる保証はない。そのとき(ストレートに言うと)滑り止めとなるような企業は、今もどんどん選考をやっている―。

 

6月以降の人気業の選考に賭けて、失敗してしまうと、就職先がなくなるかもしれない。そういった不安が、学生たちに「当初は志望していなかったが、今選考をやっている企業を受けておこう」という思いにさせたのではないか。一律自粛・延期をした大手人気企業は、完全に出遅れてしまい学生の確保に苦労したと聞いている。

 

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被災地域の応募者には、個別の柔軟な配慮を

一方で、採用活動を可能な範囲で継続するにしても「被災地の学生への配慮」を忘れないようにしたい。

トンボ鉛筆事件」は記憶に新しい。一人の採用担当者の言動が会社のイメージを著しく損なうことがありうることを忘れてはいけない。 

 

配慮とは、具体的には…以下のようなことになる。

被災による原因で、参加が困難な場合「危険を冒して、無理に参加する必要はない」「個別に連絡をもらえれば柔軟に対応する(不参加でも不利益はない)」ことを、まずは全応募者に発信

被災による原因で、応募書類の提出が困難な学生に対する、締切延長・書類選考免除など

●同様の原因で、会社説明会への参加が物理的に困難な学生に対する、説明会の追加開催・(選考に進むために説明会参加が必須の場合)説明会参加を必須とせず、特別に選考への参加を認めるなど

●同様の原因で、面接等選考への参加が物理的に困難な学生に対する、選考の追加開催・柔軟な日程調整など

大手人気業では、応募者が多いあまり「平等性」を重んじたジャッジをせざるを得ない。そのため、一律延期とした企業が多かったのだろう。

ただ、準大手・中堅中小は小回りが利くはずである。被災地域の全学生に配慮をするとなると難しいが、自社に応募している学生への配慮となると、小回りを利かせて個別対応すれば、そこまで難しくはないはずだ。

 

なお、以下も基本といえばそうだが、大事なので述べておく。

 ●説明会・面接参加学生には、避難経路を説明し、万一選考中に地震が起きたときに取る行動を確認・案内する

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番外篇:

参考までに、私が当時採用支援していたクライアントの反応をいくつか思い起こしてみたい。

大手物流子会社採用担当者のお話:(を思い起こして書いています。以下同様)

「普段であれば、絶対ウチには来てくれないレベルの学生が採用できた。震災一週間後から、安全が確保できると判断できる地域では選考を通常通り実施した。選考を自粛している企業もあったが、学生の反応は『学生としても、先行きに対して不安になっており、予定通り選考をしていただけるほうがありがたい』というものであった。」

 

Webメディア(100名規模)の人事責任者のお話:

「3月下旬から選考の予定だったところに、3/11の震災があった。延期すべきとの意見もあったが、当社の場合『延期したところで優秀な人材が採用できるわけではない』と思い、予定通り採用選考を実施した。ただし『震災の影響で選考書類が出せない方、選考会場に来られない方は、後日必ず選考の機会を別途設けるので個別に相談してください』ということは全応募者に連絡して伝えた。

結果的には、当社においては過去最高レベルの方が採用できた。また、東北の学生さんも採用できた。意外だったのは、内々定を出しても『6月の大手人気企業の選考まで待ってください』と言われるのではないかと正直不安だったのだが、4月には全員入社の意思表明をしてくれたこと。」

 

準大手メーカーの採用担当者のお話:

「業界トップの●●社は、6月まで選考を延期したが、当社は通常通り実施した。学生からは『選考を自粛している企業を待っているより、今選考をやっている企業の中で決める』という声が多かった。結果的には採用数は計画通り。レベルも満足いくものになった。採用した方の中には、3/11の当日にウチの会社説明会に参加していた人もいた。半分冗談だが、多くの学生が自宅に帰れず、説明会会場で社員たちと励ましあいながら、一緒に夜を過ごした経験が『運命』を感じさせたのではないか」

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企業対応篇は以上です。お読みくださった皆様、ありがとうございました。