Tutian日記

社員20名のベンチャーに新卒入社し、27歳で管理職になるも、29歳で創業130年老舗メーカーに一兵卒として転職してみて気づいたことを書きます。 ①人材業界②人事③就活④大企業vs中小企業といったネタで書こうと思います。ゆるいプライベートの話題も書きます。

本当に「ベンチャー企業で活躍している人は大企業に転職したいと思わない」のか

なべはるさんの日記に、ちらっとご紹介いただきありがたい限りです。ベンチャーと言われる組織から、大企業と言われる組織に転職はしたものの、本当に今の環境で価値の高い仕事ができているかは疑問で恐縮な限りです。

せっかくですので「ベンチャー企業で活躍している人は大企業に転職したいと思わない」にリアクションしてみたいと思います。

早速ですが「ベンチャー企業で活躍している人も、大企業への転職願望は持ち得る」と思います。

「(規模や歴史を問わず)今の組織で活躍している=外に出ない」とは限らないのではないかと思います。

もっと言うと「現組織で活躍している(世の中に価値ある仕事をしている)人だから、コンフォートゾーンにとどまり続けることにリスクを感じる」「外の世界でもやっていける自身もあるため、一歩を踏み出せる」という面もあるのではないかと思います。

一方「ベンチャー→大企業へ転職している人は活躍してないので目立たない」という部分は一理ある気がします。というか、特に日本の大企業ではスタンドプレーはあまり好まれません。「ベンチャーの名物人事」のように個人を前面に出して仕事をしていくことはあまり求められず、組織で仕事をすることが求められますので「個人」としての対外的な露出は減る(目立たない)傾向にあるのでは、なんて思ったりします。

だからといって「ベンチャーから大企業への転職は難しい」と言うことを鵜呑みにできないというのも同感です。実際、前職時代には「ベンチャーから転職してきた、大手企業人事担当者」も少なからずいました。自分の道をきちんと切り開ける人は、ウワサやステレオタイプにとらわれず結果を出しています。

間違いなく言えるのは「ベンチャーから大企業に転職するのが難しい」から「とりあえず大企業を目指す」なんていう人がいたとしたら、どこでも活躍するのは難しいのではないかと言うことです。

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ベンチャー企業から大企業に転職したいと思った理由 ~私の場合~

私自身が活躍したかどうかは別として…「責任ある仕事を任されて」「実力主義で評価されて給与もそれなりにもらって」いたと思います。

新卒では(当時)創業10年・従業員20名の会社に入り5年ほど勤めた後、創業100年以上・従業員連結5万人以上の会社に移りました。そして今に至るわけですが、組織を移ってみたいと思ったのは、具体的に言うと以下のような理由です。

①大きな組織を動かせるようになりたい

裁量は間違いなく前職時代のほうが大きかったです。

しかし「規模がでかい組織では、自分の裁量も小さくなる。組織のレイヤーも増え、調整の難易度が上がるけど、何万人の人が動く仕組み作りに関わることができれば、社会に与えるインパクトはより大きいのではないか」と考えました。

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 ②金額的に、より影響度の大きい仕事がしたい

①と似ています。

利益=仕事の価値だと考えると「裁量・責任のある仕事はできるが、生み出す利益規模が限定的」よりも「数千億円の利益を出している企業を、時間はかかるかもしれないがもっと儲かる企業に変える」方が、意味が大きいのではないかと思ったのです。

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 ③仕事のフィールドを広げたい

前職では「採用」に関わる仕事がメインでした。採用は上流工程からオペレーションまで幅広く経験をさせてもらえました。様々な規模・業種の会社とかかわることもできました。

これらは、間違いなく今でも私の血肉になっており、財産です。(私は、ビジネス筋肉と呼んでいます)

しかし、それもあくまで「採用」というフィールドの中だけであることに、このままでいいのかという危機感がずっとありました。

採用は会社経営にとって、重要な業務の一つであることは間違いありません。ただ、組織の「ヒト」の問題は「入口」以外にもたくさんあります。「人事」の仕事のフィールドを広げたいという気持ちが徐々に強くなっていきました。また「採用」以外の人事業務も知ったうえで、採用の重要性を主張できる人材のほうが価値が高いと思ったのです。

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④会社の方向性への共感

前職の会社には、確固たる理念があり、昔も今も沢山の素晴らしい支持者がいらっしゃいます。

それを否定する気は全くないのですが、年を経るにつれ、会社の方向性に対し「仕事人生を賭して関わりたい」と断言できなくなってきた自分がいました。これは、どっちが正しい・悪いというよりは、相性の問題です。

規模の大小を問わず「会社の方向性に共感できる」かどうかは、働き続けるうえで大事な要素です。ベンチャー(安穏としていては存続できない会社)で、ある程度リスクをとって働くのであれば、尚更かもしれません。(「つぶれにくい」組織で働くことのリスクも勿論ありますが、ここでは触れません)

そして、今所属する企業は、典型的な古い日本的企業ですが「より収益力のある会社に変わろう」としているところに共感し、そのプロセスに自分を必要だと言ってもらえる環境があったことが大きな後押しになりました。

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⑤働き方を変えたい

どちらかというと副次的な理由です。

前職には、社内外ともに、30台を超え40代~50代になっても毎日深夜まで働いて平気、土日も仕事をしているのが自然、という方たちがゴロゴロいました。もともと人材業界というのはハードな働き方が根付いている業界です。

私自身、社会人1~3年目までは朝7時に出社、終電で帰るのが当たり前、土日もどちらかは仕事、という生活でした。4年目以降はさすがに労働時間は減りましたが、それでもピーク時には会社に泊まることもありました。これは「経験値を積む期間を圧縮する」という意味では、若いうちにやっておいて本当に良かったと思います。

ただ、私はそこまで体が頑丈なわけでもありません。「長期的に何らかの形で働く」ことを考えると、30、40、50と年を重ねていく時、同じ働き方をずっと続られないと思う自分がいました。

転職後は、平均すると労働時間が短くなった分、家族とのコミュニケーションやストレス発散に時間をとることができるようになりました。(ちなみに、大手=労働時間が短いというのは誤解で、部署・時期によってはめちゃめちゃ長時間労働しています)

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⑥「未完成なのがおもしろい」は同じ

よく「未完成だからこそベンチャーを選ぶ」という話があります(というか自分も話していた)が、前職の仕事で様々な規模・歴史の組織とお付き合いするうち「組織の規模・歴史と完成度は関係ない」と思うようになりました。歴史が長い&大規模=完成形、というのは全くのウソです。逆に、歴史があり関係者が多いと「未完成」である現状を変え「完成」に近づける難易度は高くなるとさえ感じています。

また、今の会社が持つ悩みは、ある程度同等以上の歴史・規模の会社は大なり小なり抱えているはず。ということは、伝統的な組織を変えるプロセスに立ち会う経験というものは、どこでも通用するスキルになりえると思ったのです。

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⑦人生のレアカードになりたい

「人生のレアカード」という考え方にとても共感しています。

私自身、思えばずっと「逆張り」を意識してきた気がします。

【英語×中国語】大学時代、中国語専攻だった私。同期のみんなが中国に留学に行くので「中国語も英語も話せれば差別化できる」と思い、アメリカに留学したり…

【売り手市場×ベンチャー】就職活動時は空前の売り手市場。大学の友人はほとんど大手に就職しましたが「大手企業では自分が埋もれてしまう。でもベンチャーであれば競争相手も少ないし、目立つのでは」と思い、会社を選んだり…

今回の転職でも【ベンチャー×大手】【コンサルティング視点×事業会社視点】【人事×グローバル】など、もっと「レア度」を高めたいという考えがあったのだと思います。

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⑧「やり切った感」があった

自分の判断を自分で正当化したのかもしれませんが「やれることはやった」「自分の給料(賃金以外のコスト含む)以上の利益を会社に貢献した」という気持ちが最後は大きかったです。

今考えると、本当によく入れてもらえたなと思いますが、前職に入る際は「自分の給料以上の貢献ができたら辞める」と言っていました。

転職する直前に、自分も作成に関わって、経営陣にコミットした全社売上・利益目標を達成しました。メンバーの努力や外部環境の好転もあって、過去最高の利益になりました。辞めようと思ったとき「ここで逃げたらダメだ」と何度も踏みとどまりましたが、この時ばかりは「ここまでやれば『逃げた』とは言われないだろう」と妙な開放感に包まれました。

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長々と書きましたが、ざっくりいうと「経験のないことを経験してみたかった(=無いものねだり)」と言うことにつきます。前職の会社も、メンバーも好きでしたが「一度の人生なのでいろんなことを」という欲求が勝ったのだと思います。(そのせいで少なからず迷惑を被った方々もいらっしゃるとは思いますが…)

 というわけで「ベンチャー企業で活躍している人も大企業に転職したい」と思い得るのではないかと思います。

 

ちなみに、余談ですが「ベンチャー(若い・小規模組織)」と「大手(歴史長い・大規模組織)」を両方経験してみて「それぞれ求められる仕事の姿勢や、仕事の難しさの性質が若干異なる」と感じます。

一方で「組織の年齢・規模にかかわらず活躍する人材が普遍的に備えている素養」もあると感じています。

このあたりについて、またなべはるさんとお話してみたいですね。